
タイ旅行やタイ赴任、タイ移住をする際に欠かせないのがスマートフォンの通信環境です。
以前のタイでは「AIS」「True」「dtac」の3大キャリアが市場を争っていましたが、2023年にTrueとdtacが経営統合したことで、市場は大きく変化しました。現在では実質的にAISとTrue Corporationの2大キャリア体制となっており、タイのモバイル通信市場は新たな時代を迎えています。
この記事では、タイの2大キャリア事情、AISとTrueの違い、通信品質や5Gエリアの最新状況、eSIMの普及状況、そして今後のタイ通信市場の見通しまで、詳しく解説します。
タイの通信市場は2大キャリア時代へ

2023年、タイ通信業界最大のニュースとなったのが、TrueMove Hとdtacの経営統合です。合併後の会社名は「True Corporation」となりました。
統合当初は、サービスブランドとして「TrueMove H」「dtac」の両ブランドを維持しながらのサービス提供が続けられていましたが、現在ではブランドやネットワークの統合が段階的に進められています。これにより、タイの通信市場は実質的に「AIS」「True Corporation」の2社が市場の大半を占める構造となりました。
現在のタイ通信市場シェア
現在のタイでは、契約者の大部分を以下の構成が占めています。
| キャリア | 特徴 |
|---|---|
| AIS | 国内最大手・通信品質トップクラス |
| True Corporation | TrueとDTACが統合した巨大キャリア |
| National Telecom(NT) | 国営企業・シェアは限定的 |
AISとTrueだけでタイの携帯市場のほぼすべてを占める状況となっており、日本でいうNTTドコモ・au・SoftBankの3社体制とは少し異なる、寡占色の強い市場構造になっています。
AISは依然として通信品質トップとの評価

タイで通信品質を重視するなら、今も昔もAISを選ぶ人が非常に多いです。特に地方都市、離島、山間部、高速道路といった、人口密度の低いエリアではAISの強さが際立ちます。
実際に複数の通信エリア比較サービスでも、「バンコクなど都市部以外を旅行するならAIS」という評価が定着しており、北部のチェンマイ・パーイ・メーホンソン方面や、離島を巡るアイランドホッピングを予定している旅行者には、依然としてAISが第一候補として推奨されています。
AISの特徴
- タイ最大の契約者数
- 全国で安定したエリアカバレッジ
- 5Gエリアが広い
- 通信速度が速い
- 法人契約も多数
旅行者だけでなく、タイ在住者からも「とりあえずAISを選んでおけば安心」という声が根強く、長年培われてきた信頼性の高さがうかがえます。
True Corporationは統合により巨大キャリアへ成長

TrueとDTACの統合によって誕生したTrue Corporationは、契約者数でAISと肩を並べる巨大キャリアとなりました。2026年第1四半期の時点で、モバイル契約者数は約4,810万件(前四半期比61万4,000件増)、5Gユーザー数は約1,840万件に達しており、5Gカバレッジはタイ全77県で確立されています。
四半期の純利益も66億バーツを記録し、5四半期連続の黒字を達成するなど、統合後の経営基盤は着実に安定してきています。
統合によって、基地局の共有、周波数の最適化、設備投資の効率化などが進められており、2025年6月に実施されたNBTC(タイ国家放送通信委員会)の周波数オークションでも新たな周波数帯を獲得するなど、積極的な投資が続いています。
都市部の通信環境はかなり改善
都市部では通信品質も年々改善されており、特にバンコク、チェンマイ、パタヤ、プーケットといった主要都市・観光地では、AISとの体感差を感じないケースも増えています。
ただし、地方の山間部や離島といった非都市部エリアでは、統合後もなおAISが優位を保っているとする調査結果が多く、「都市部はTrueも互角、地方はAISが依然リード」というのが2026年時点での実態に近い評価です。
5Gエリアはタイ全土へ拡大
タイでは2020年から5Gサービスが始まりました。現在ではバンコク、チェンマイ、プーケット、パタヤ、ホアヒン、コンケーン、ウドンタニなど主要都市はもちろん、地方都市でも5Gエリアが急速に広がっています。
先述の通り、True Corporationは2026年第1四半期の時点で全77県に5Gカバレッジを確立したと発表しており、AISも同様に全国規模での5G整備を進めています。近年は1万円台〜2万円台の5G対応スマートフォンも増えており、タイ国内でも5G利用者は年々増加しています。旅行者向けSIMカード・eSIMでも、5G対応プランが提供されるのが一般的になってきました。
タイのスマホ料金は今でも日本より安い
タイの通信料金は、2大キャリア体制に移行した現在でも日本より安価な水準を保っています。大容量プラン、無制限プラン、プリペイドSIMなどは数百バーツから利用でき、旅行者向けSIMも7日間・10日間・15日間・30日間など様々な期間のプランが販売されているため、コストパフォーマンスは非常に高いといえます。
タイではeSIMが当たり前の時代に

ここ数年で最も大きく変わったのが、eSIMの普及です。以前は空港到着ロビーでSIMカードを購入するのが一般的でしたが、現在では「日本出発前にeSIMを購入し、QRコードを読み込むだけで、タイ到着後すぐに利用を開始できる」というスタイルが主流になりつつあります。
旅行者向けeSIMも、AIS・True両方のネットワークに対応したサービスが多数販売されており、SIMカードを交換する必要がなく、日本のSIMを差したまま利用できるため、非常に人気を集めています。用途に応じて、あえて片方のネットワークを指定できるサービスもあるため、「地方も回る予定があるからAIS回線のeSIMを選ぶ」といった選び方も可能です。
タイ通信市場の歴史をおさらい

現在は2大キャリア時代となっていますが、タイの通信市場にはそれなりに長い歴史があります。
国営企業時代
以前は「TOT」「CAT Telecom」という国営企業が通信事業を担っていました。
民営化と通信自由化
2000年代に入り通信市場が自由化され、AIS・True・dtacの3社が本格的に競争を開始しました。この時代は料金競争も激しく、通信品質も急速に向上していきました。
National Telecom誕生
2021年には、TOTとCATが統合され、National Telecom(NT)が誕生しました。現在も通信サービスを提供していますが、市場シェアは限定的にとどまっています。
Trueとdtacが統合
2023年、TrueとDTACが経営統合しました。これによりタイ通信市場は「AIS対True Corporation」という2強時代に突入し、現在に至っています。
2大キャリア体制のメリットと懸念点

通信会社側から見たメリット
基地局投資の効率化、5G整備の加速、通信品質向上、周波数の有効活用など、統合によるメリットは多くあります。実際に都市部では通信速度の改善が進んでおり、投資余力が生まれたことで、より積極的な設備投資が可能になっている側面もあります。
利用者目線で懸念される点
一方で、利用者目線では気になる点もあります。
価格競争が弱くなる可能性:競争相手が少なくなることで、料金が似通い、大幅な値下げ競争が起きにくくなる可能性が指摘されています。
MVNOが少ない:日本ではIIJmio、mineo、povo、LINEMOなど多くの格安SIM(MVNO)がありますが、タイではMVNOの数はまだ少なく、大手キャリアを利用するケースが中心です。今後はMVNO市場の拡大が期待されています。
規制当局(NBTC)の役割が重要に
タイの通信行政を担当するのが、NBTC(タイ国家放送通信委員会)です。今後、料金競争の維持、MVNO促進、消費者保護、周波数政策などをどのように進めていくかが、市場全体の健全性を左右する重要なポイントになるでしょう。NBTCは2025年にも周波数オークションを実施するなど、継続的に市場への関与を続けています。
タイ旅行ならAISとTrue、結局どちらがおすすめ?

旅行者であれば、AISとTrueのどちらを選んでも、バンコクをはじめとする主要観光地では快適に通信を利用できます。
判断基準を整理すると、以下のようになります。
- 通信品質・エリアの広さを最優先するなら:AIS。特に地方都市・離島・山間部を巡る旅程がある場合はAISが安心
- 都市部中心の旅程で、コストパフォーマンスも重視するなら:True Corporationも十分に有力な選択肢
近年は旅行向けeSIMサービスでもAIS回線・True回線の両方が選べるケースが増えているため、自分の旅程(都市部中心か、地方・離島も回るか)と、利用日数・料金・データ容量を照らし合わせて選ぶのがおすすめです。
AISについてさらに詳しく知りたい方は「タイ最大手通信キャリア「AIS」とは?特徴・料金・SIMカード・5Gまで徹底解説」もあわせてご覧ください。
タイの通信はかなり快適になっている
Trueとdtacの経営統合により、タイの通信市場は実質的にAISとTrue Corporationによる2大キャリア時代へと移行しました。True Corporationは2026年時点で契約者数・5Gカバレッジともに急速に拡大しており、都市部ではAISとの差が縮まりつつある一方、地方・離島エリアでは依然としてAISの優位性が保たれています。
5Gの普及やeSIMの一般化により、旅行者・在住者ともに以前より快適な通信環境を利用できるようになっている一方で、競争環境の変化による料金やサービスへの影響も今後の注目ポイントです。
これからタイ旅行やタイ赴任を予定している方は、AISとTrueそれぞれの特徴と、2026年時点の最新事情を理解したうえで、自分の旅程・利用スタイルに合ったSIMカードやeSIMを選ぶことが、快適なタイ滞在につながります。


