TRUEとDtacの合併でタイは2社体制に
タイの通信キャリア2位のTRUE (トゥルー・コーポレーション)と3位のDtac (トータル・アクセス・コミュニケーション)の合併が最終段階に入り、2023年第1四半期での合併に向けて最終段階に入っている。
合併後の会社の名前はTRUE CORPORATIONとなるとの事ですが、当面は現状の「TRUE MOVE」と「Dtac」のサービス名を残して利用している顧客に継続してサービスの提供を行うとの事で利用者に特に大きな影響は無さそうです。
ただ、業界2位と業界3位が合併して誕生する新しい「TRUE Corporation」の契約者数は5,100万人以上になり、現在4,370万人の加入者を持つ業界TOPのAISを上回りシェアトップとなりました。
これによりタイの通信事業は新会社TRUEとAISの2社状態になるので価格競争などがなくならないか心配な部分もありますが、今後に期待していきたいですね。
ただ当面はdtacというキャリアも残すため、3キャリア体制が続いてく予定です。
タイの通信も一気に進化を続けている。
タイでも一気にeSIMでの契約が普及
2022年にはタイの大手キャリアでは店頭で簡単にeSIMでの契約が出来るようになったことから、eSIMがかなり普及した印象です。
元々、タイでは海外旅行の際のツールとして「SIM2Fly」をはじめとしてローミングSIMが一般的になり、レンタルポケットWiFiを旅行の際に使うという人が減少傾向にありましたが、eSIMの普及によりよりコスパの優れた現地SIMを旅行前にeSIMで買うという方法が今後さらに加速していきそうな気がします。
ただ、まだハイスペックな端末にのみeSIMが搭載されており、対応のスマホは多くないので今後eSIM対応の廉価スマホが出てくるかどうかががさらなる普及のポイントになってくるでしょう。
5Gエリアも拡大
タイでは2020年から5Gの商用利用が開始されましたが、2024年時点でタイ国内のかなりの範囲で5Gが使えるようになっています。
5Gを利用するには5Gが使える端末が必要となりますが、5G通信に対応した携帯端末が必要となりますが低価格な5G対応スマホも増加しており、5Gユーザーはかなり増加しています。
5Gの速度比較では、場所にもよりますがAISが優勢な場所が多く、タイで安定した5G通信を使いたいなら現状AIS一択だと思います。
プランに関しては日本のスマホプランも安くはなっていますが、まだまだタイの方が安い状況です。
タイの通信事業の歴史
簡単にタイのモバイル通信の歴史に関して振り返ってみましょう。
国営企業の独占
携帯電話事業は、TOT(固定電話などを展開)とCAT(郵便事業などを展開)という2社の国営企業によって独占提供されていました。
自由化の進展
2000年代半ばに通信事業が自由化され、タクシン氏率いるAISがTOTの周波数帯をレンタル提供するスキームで営業権を取得。
新たなキャリアの登場
ノルウェーの通信キャリア・テレノールのDTAC、タイ財閥大手のCPグループのTRUEがCATと同様のスキームで契約し、参入した。
タイの通信キャリアは5キャリア
AIS、TRUE、DTACがタイの通信キャリアと思われているが、TOTとCATもサービスを継続しているがTOTとCATを合わせても市場シェアは4%未満とあまり目立ってはいない。
TOTとCATの合併
TOTとCATが合併し、National Telecomが誕生したが、話題性は低くシェア拡大には成功していない。
今後は民間企業とMVNOにて連携強化をしていく方向性。
TRUEとDtacの合併
TRUEとDtacが合併し、TRUEが2つのサービスを展開している形になっている。今後はおそらくTrueに一本化していく方向性だと予想されるがDtacが重荷になっている印象。
タイの通信に関する今後の問題点など
ではタイの通信に関する今後の問題点などをまとめていこうと思います。
1. 通信事業者の構造と課題
通信事業者は、設備投資が非常に重く、これに加えて国家資産である周波数帯を割り当てる役割も担っています。そのため、通信業界には資本力のあるごく限られた大企業のみが認められるのが一般的です。
この結果、モバイルキャリアは多くの国で3社または4社の寡占状態にあることが多いのです。このような寡占状態は、顧客にとっては選択肢が限られることを意味し、競争が不足するために料金が高止まりする原因ともなります。
2. 富の集中と談合的な価格設定
多くの国で一部の寡占企業に富が集中していることや、企業間での談合的な価格設定に対する反発が強まっています。この問題は、消費者だけでなく、政府や規制当局からも対応が求められています。多くの国では、通信業界の競争を促進するために様々な措置が講じられています。
例えば、フランスではキャリアに対してMVNO(仮想移動体通信事業者)を受け入れる義務を課しており、電波オークションの際にはMVNOへの開放計画の提示を義務付けるなど、競争環境を整えるための具体的な施策が実施されています。
3. タイの現状と規制の取り組み
タイでも建前上は同様の方針があり、タイの通信規制機関であるNBTC(国家放送通信委員会)は、MVNO事業者に対してキャリアに開放するよう要請しています。しかし、実際にはこの方針がどれほど実行されているかは疑問が残ります。
日本と比べてMVNOの数も少なく、特徴的なMVNOも少なくなっておりMVNOの参入障壁はいまだ高いままといわざるを得ない状況です。
4. TRUEとDTACの合併の影響
タイでは、TRUEとDTACの合併が最終承認されると、実質的に3社キャリア体制から2社キャリア体制に移行することになります。この変化は、競争環境に大きな影響を及ぼす可能性があります。最近では、米国においてSprintとT-Mobileの合併が話題となりましたが、Softbankも介入したため、日本でも注目されています。
米国の場合、承認が降りるまでに2年かかりましたが、状況は4社から3社の統合であり、タイの3社から2社への移行とは全く異なる問題で、以下にてご紹介する複占市場による問題点が心配されています。
5. 複占市場の不安定性
2社独占状態を指して「複占市場」と呼びますが、この状態では競争原理が働きにくく、極めて不安定な市場環境が形成されます。競争がないため、両社は相手の価格や戦略を待ってから反応する「両すくみ」の状態になります。
既にシェアがほぼ50%ずつ分け合っているため、新規参入者にとっては市場に入り込む余地が限られています。この結果、いわゆるナッシュ均衡の状態に陥り、最終的には価格が高止まりして硬直化するシナリオが考えられます。
これらの要因を踏まえると、タイの通信市場は今後ますます競争が難しくなる可能性があります。特に、TRUEとDTACの合併によって市場のダイナミズムが失われると、消費者にとっては不利益が増す一方で、業界全体にとっても健全な競争環境が維持できなくなる恐れがあります。
今後、NBTCや他の規制当局がどのように市場の健全性を保つための施策を講じるかが、非常に重要なポイントとなるでしょう。