盛り上がりを見せる低軌道衛星を使った通信事業
2021年のモバイル・ワールド・コングレスにてSpaceX社のCEOイーロン マスク氏が 低軌道衛星を使った通信事業「スターリンク」の状況を発表しましたが、すでに1,500基以上の低軌道衛星を打ち上げており、すでに十数か国で通信サービスを提供しているとの事です。
SpaceX社のスターリンク以外では、 AST & Science社 のスペースモバイル、ワンウェブといったいくつかの低軌道衛星を用いた通信事業などがある。
低軌道衛星を使った通信事業ってどういう事?
低軌道衛星とは他の衛星と比べて低い高度を周回する衛星を指し、地表から2000km以下を周回している物を指します。
その低軌道衛星を数百から数千基周回させることで地上にインターネットでの通信を提供します。
低軌道衛星を使った通信事業のメリット
従来の中高度軌道を周回する衛星と比較した際のメリットをご紹介します。
・速度が速い
従来の衛星より地球から近い位置を周回するため、通信速度が出やすいという特徴があります。
・衛星1台のコスト削減
従来の衛星と比べると1台を作るためにかかるコストは削減される。
・衛星の連携による高いカバー率
今まで不可能だった衛星の連携により、地球上の広いスペースをカバーできる。
上記はデメリットですが、課題としては接続している衛星が切り替わる際の通信の不安定さ、カバレッジを広げるために必要な衛星の数が多いことによるコスト増加などが懸念事項として挙げられます。
日本の低軌道衛星を使った通信キャリアの現在
日本ではすでに大手3キャリアは人口カバー率99%以上を誇っているが、日本の国土全体で言うと7割程度しかカバーできていない状況。低軌道衛星による通信サービスを提供することにより残りの30%のカバーや緊急時の通信サービスの提供が可能になる。
ただ、現時点での低軌道人工衛星を用いた通信サービスは専用の周波数帯を使用しているので個人のスマホで使うというよりはIoTなどでの活用がメインになると思われます。
au
auを展開するKDDIはSpace Xとの提携を発表しました。9月中にSpaceXとKDDIで実証実験を開始し、2022年中のサービス提供開始を目指すとの事です。山間部や海上など基地局の設置が難しい場所での通信や、災害時のバックアップの用途で利用する予定のようです。
SpaceXはすでに7万人以上のユーザーがおり、複数の国でサービス展開をしているので現状では一番進んでいるサービスと言えるかもしれません。
楽天
楽天はアメリカのAST & Science社と協業し衛星通信事業を展開していく予定。
現在、楽天グループが展開する楽天モバイルは他の日本の大手3社と比べてカバレッジの部分で大きく後れを取っており、このカバレッジの問題を AST & Science社 との「スペースモバイル計画」でカバーする計画のようです。
このスペースモバイル計画では地上730Kmの高さを回る人工衛星と、スマートフォンが直接通信を行う事で日本全土をカバーする計画です。
Softbank
SoftbankはイギリスのOneWeb社と協業し衛星通信事業を展開していく予定。
現在、OneWabでは2021年4月時点で182基以上の衛星の打ち上げを完了しており、2021年末までに北緯50度以上の地域でサービス展開を行い、2022年中には世界でのサービス展開を開始する予定との事です。
OneWebのビジネスモデルは、各国の通信会社に衛星を使用した通信インフラを提供することにより収益を上げるというものです。
Docomo
NTTはJAXAと協力協定を結び、両者の技術融合による社会インフラの創出を目指している。
現状ではNTTがサービス提供の予定などを発表していない状況ですが、今後に期待しましょう。
また、NTTではスカパーJSATホールディングスと協業し人工衛星上で「宇宙データセンター」を提供する取り組みも進めている。こちらは2026年の開始を目指している。
さいごに
最近では中国の開発も進んでいるようですが、人工衛星を打ち上げられる数や軌道、周波数帯の確保など、早く参入した方が有利という状況で日本の通信事業者には是非頑張って欲しいですね。