最近、タイのバンコクでも見積書などが「電子サイン」「電子署名」で送られてくる事が増えてきていますが、署名をする機会のある方はもう使たことがあるという方の方が多いのではないでしょうか。
使うまでは、ウェブ上でサインをするものだろうという程度の認識はありましたが、そんなに業務の効率化に繋がるのか疑問な部分も多々ありました。電子サインと従来の紙へサインをするのと比べて何がどういいのか良く分からないという方もいるかと思います。
今回は業務での電子サイン(署名)の利用について色々ご紹介して行ければと思います。
使ってみて気づいた電子サイン(署名)のメリット
まずは、実際に使ってみた電子サイン(署名)のメリットを5つほどご紹介いたします。
電子サイン(署名)に切り替える事で何が変わるのか、どういった問題を解決することができるのかをご紹介いたします。
1.署名する場所を選ばない
まず、電子サイン(署名)の一番のメリットは署名する場所を選ばないという事でしょう。
従来の紙の署名の場合、プリンターで印刷してそれに署名をし、スキャンしたデータを先方に送って原本は会社で保管をするという流れで電子署名を利用していたという方も多いと思います。
もちろん、タイ国内以外にも、海外法人(拠点)との契約や海外出張中のサイン(署名)もPCやスマホがあれば一瞬で作業が完了します。また、電子サイン(署名)システムを利用している場合には署名後は双方にPDFが自動送信されるので、原本を送りあう必要もなくなり業務がかなりスムーズになります。
2.業務スピードの向上
上記にてご紹介した署名する場所を選ばないというメリットがもたらす効果として、業務スピードの向上が挙げられます。業務を行う上で場所や時間に縛られるのはある程度仕方のないことですが、それが電子サイン(署名)システムを導入することで、スマホとPCとネットがあればいつでもどこでもサインをすることが出来ます。契約や発注を締結し業務を進める事ができるので、サイナーの方によくあるサインのためだけに出社する必要もなくなります。
電子サイン(署名)システムに加えて、承認プロセスもシステム化することで更に働く場所や時間に縛られなくなります。こういったシステムはワークフロムホームやワーケーションを行う上で最も重要なパーツのひとつと言えるでしょう。
3.コストの削減
電子サイン(署名)システムの導入にはお金がかかるので、コストがかなり増えるというイメージがあるかもしれませんが、総合してみるとコスト削減に繋がる可能性があります。コスト削減が期待できるのは以下のコストです。
3-1紙の契約コスト削減
紙で契約を締結するような場合には、紙代やインク代、封筒代や配送費用などの費用が掛かりますが、これらが全て削減可能になります。見積書を良く出す業種や、個人向けのサービスで契約書の数が多い業種などだとかなり大きな金額の削減が可能になります。
3-2管理コストの削減
紙の書類の最もコストがかかる部分が管理コストです。社内で保管する場合にはキャビネットやそれを置くスペースなどの固定費用が必要ですし、社内に置けない場合には別途倉庫を借りたりする必要があります。
また、書類を取りに行ったり、保管場所で必要な書類を探したりと様々なコストがかかりますが、システムで一元管理をすることでこれらのコストが無くなります。
4.安全性の向上
紙で保管している以上、洪水や浸水、火災や盗難などのリスクは必ずありますが、システムで管理を行う事でそういったリスクを排除することが出来ます。
また、システムを使うことで、編集権限の管理や、編集履歴の保管が出来るようになるため、データ改ざんの心配がありません。
✅ まずは試してみよう!
電子サイン(署名)システムを使う事により時間あy場所を選ばずにサインをすることが出来ます。
海外出張中などオフィスにいない期間に業務がとまってしまうという問題を解決することもでき、コストの削減や安全性の向上に繋がるので導入を検討している企業は是非一度試してみる事をおすすめします。
従来のPDFのサインと何が違う?
電子サイン(署名)の話をする際に、PDFやエクセルでサインをしているという企業さんも多く、この方法でもスマホとPCがあれば出来る!と思っている方も多いのではないでしょうか。
PDF等の機能を使ってPCやスマートフォン上でサイン(署名)を行っている方も多いのではないでしょうか?
サイン用に手書きしたサイン画像をアップロードして使ったり、エクセルで普通に文字を入力するのをサインとしている方もいまだにいると思います。
これもサイン(署名)には間違いないので、これで承認プロセスを進める事は出来ますが、「誰でも同じサインが出来る」「偽造や改ざんが容易に行える」というリスクもかなり高くなります。
また、電子証明書が無く、タイムスタンプもないため、重要な書類の場合電子署名としての要件を満たしておらず、法定な契約書の買い残の有無を法的に証明することが出来ないという判断をされることがあります。
サインの画像データがNGの理由
サインの画像を作成して利用している方もいらっしゃいまるのではないでしょうか。
Excel等の一般的なソフトを使って誰でも手軽に作れるので正式なシステムを利用するよりコストを抑える事が出来るのでそれを魅力的に感じて利用していると思います。
ただ、先程も言ったように「誰でも手軽に作れる」画像データでは簡単に複製や悪用される可能性が出てきますし、サイナー本人の承認なしに利用されても悪用を証明することが出来ません。
日本で言うシャチハタのようなイメージで重要でない書類に使う分には問題ないですが、正式な書類へのサインとして利用するには悪用などの観点から避けてください。
✅ 使うシステムはしっかり選ぼう
デジタル文書用の電子サイン(署名)システムは、選ぶタイプによって法的根拠がある物とない物に分かれます。利用する際には「電子証明書」がある「タイムスタンプ」が残るなど法的根拠がある電子サイン(署名)システムを使用するようにしましょう。
電子サイン(署名)関連の用語を解説
「電子証明書」や「タイムスタンプ」などの用語が出てきましたが、これらの用語を知らないといまいち電子サイン(署名)システムの必要性を認識できない部分もあると思います。
なので、ここで代表的な電子サイン(署名)関連の用語を解説いたします。
電子証明書
電子サイン(署名)のシステムを利用する大きなメリットの一つとして、電子証明書が付与されるかどうかという点があります。
電子サインのシステムを使ってサイン(署名)を行った時に、電子証明書が付与されることで、「誰が」「何のデータを作成」したかという証明をすることが出来ます。
これが無い場合には「PDFにサイン」や「エクセルで署名」と変わらないのでシステムを利用する際にはしっかりと確認を行いましょう。
タイムスタンプ
タイムスタンプは電子データが、「いつ」の時点で作成され、「それ以降改ざんされていない」ことを証明する電子サイン(署名)の法的根拠を示す物で電子サイン(署名)サービスに必須の機能です。
タイムスタンプの有効期限は押印日時より10年間とされており、書類保管の基本的な期間をカバーしてくれます。
再度タイムススタンプを押印することで期間の延長が可能で、改ざん防止や不正対策にも重要な機能となります。
長期署名
最後に長期署名ですが、「電子証明書」と「タイムスタンプ」の両方が揃っている物を長期署名と言います。
電子証明書とタイムスタンプが揃う事で「いつ」「誰が」「何のデータを作成」したかを確定させることが出来るので、データを確認することでいつでも確認を行う事が出来ます。
長期署名を行っている書類はダウンロードしたPDFも原本として利用することが出来るので、ビジネスにおいて重要なポイントとなります。
日本で言うシャチハタのようなイメージで重要でない書類に使う分には問題ないですが、正式な書類へのサインとして利用するには悪用などの観点から避けてください。
✅ 問合せの際は長期署名に対応しているか確認!
電子サインシステムはタイでも色々な会社が提供していますが、問合せを行う際には長期署名に対応しているシステムかを確認しましょう。基本的には大手が提供しているシステムは長期署名に対応しております。
タイに進出している電子署名
では、タイに進出している電子署名サービスをご紹介いたします。
拠点はないけど、タイ語対応している物も含みます。
以下のサービスから気になるものに問いあわせてみましょう。
a2sign(エーツーサイン)
a2signはタイでの利用に特化した電子サインサービスです。電子サインを利用すれば、場所を問わずいつでも署名を行うことができます。ペーパーレス化にも最適です。
a2signのメリット
a2signは、日本の法務省認定事業であるサインタイムが提供する電子サインサービスのOEMサービスです。タイにて15年間berrymobileを運営する弊社の専門スタッフ(日本語・タイ語・英語)がサポートいたします。
●月額300THBからご利用可能
月10通まで無料送信できるミニマムプランは、たったの月額300THBでご利用いただけます。月に数回、海外拠点と契約締結がある企業様や、出張時のみ利用したい企業様にも最適です。
●貴社独自のメールアドレス・ロゴを使用可能
相手方に署名を依頼する際の自動送信アドレスは、貴社独自で設定が可能です。また、a2signロゴもご希望に応じて貴社ロゴへ変更が可能です。他サービスにはないa2signだけのオリジナル機能です。
●書類データの取り込みが可能
現在お手持ちの紙の契約書をスキャンして、a2signのアカウントに保存することが可能です。これにより、電子サインを用いた契約書と、既存の紙の契約書を同じプラットフォームで管理できます。
<”CloudRoom for Biz”との組み合わせで完全なペーパーレスを実現!>
お手持ちの紙の書類をスキャンしてデータ化、さらに原本は低価格でお預かりができる、”CloudRoom for Biz”。電子サインと併せて利用することで、貴社アカウントで既存の紙書類も管理、完全ペーパーレスを実現します。
DocuSign(ドキュサイン)
タイではIngram Micro (Thailand) Ltd.が代理店としてDocuSignを販売しているようです。
タイ語にも対応しているので、タイでの利用も問題ないでしょう。
ドキュサインとは?
DocuSign は、世界 188 か国に 25 万社以上の企業と 1 億人以上のユーザーを抱える信頼できるグローバル企業です。
DocuSign は、タイ語を含む 43 以上の言語での使用をサポートするとともに、紙の使用を同時に削減することで、すべてのユーザーの作業をより簡単、より速く、より安全に、コストを削減し、世界資源を節約することを目指しています。
ユーザーの文書管理をより効率的、便利、迅速、簡単にする電子文書署名システム (電子署名)。法的に認められた安全性を備えています法廷で証拠として使用できます。 (タイでは 2001 年からこれをサポートする法律が制定されています。) さまざまな契約書で使用でき、人事文書、商業契約、消費者契約、不動産契約など、あらゆる業界のさまざまなアプリケーションに対応します。
タイの電子署名の法律
タイの法律において、電子署名の有効性は、**Electronic Transactions Act, B.E. 2544(2001)(以下「タイ電子取引法」)**により正式に認められています。
この法律は、電子取引における契約やその他の法的行為をスムーズに進めるために制定されたものであり、電子署名の合法性と有効性に関する基準を定めています。
タイ電子取引法に基づく電子署名の定義は非常に広範囲であり、物理的な署名に代わるさまざまな形式の電子署名が合法的に認められる仕組みとなっており、電子署名を利用する際に
ビジネスで電子署名が活躍!
電子署名は、取引契約書や雇用契約書、取締役会議の議事録、株主総会の議事録など、タイでのビジネスでよく使われるさまざまな書類に広く利用できます。また、請求書やレターなど、署名が必要な書類にも電子署名が使えるため、タイの企業でも日常業務で活用することが可能便利なツールとなります。
ただし、いくつかの書類では電子署名を使用できないケースがあるため、注意が必要です。
例えば、タイの法律では、家族や相続に関する文書には電子署名を使うことが明確に禁止されています。また、法律で禁止されているわけではないものの、政府機関に提出する必要がある書類も、電子署名が認められない場合があります。たとえば、不動産賃貸契約や土地の売買契約書を土地局に登録する際、現在の実務では電子署名付きの書類を受け付けていません。
さらに、一部の政府機関は、自分たちの専用システムでしか電子署名を受け付けない場合もあります。たとえば、タイ商務省では一部の書類に対して電子書類を受け付けていますが、商務省の専用システム(DBD e-Registration)で作成された電子署名のみ対応しています。そのため、現時点では電子署名が活用される場面はまだ限られています。
このように、電子署名はビジネスにおいて便利なツールですが、政府機関に登録・提出する書類などには使用できない場合が多いので注意が必要です。
以下の書類は電子サインが利用可能なです。
請求書 |
取引契約書 |
雇用契約書 |
取締役会議事録 |
株主総会議事録 |
電子署名の義務に関して
タイの電子取引法では、電子署名を使用する署名者にいくつかの義務が課されています。まず、署名者は、電子署名の作成に使用するデータ(例えば、暗号キーやパスワード)が不正に使用されないよう、合理的な注意を払わなければなりません。この注意義務は、電子署名が安全に利用され、第三者による不正アクセスや悪用を防ぐための重要なものです。
さらに、もし電子署名の作成に使用したデータが漏えいした場合、署名者は、その電子署名を信頼している関係者や取引先に対し、速やかに通知する義務があります。これにより、関係者は不正な署名や不正利用のリスクを認識し、必要な対策を講じることができるようになります。
また、**Certificate(電子証明書)付きの信頼性の高い電子署名の場合、その署名の信頼性を保証する役割を担う署名検証者(Certificate Authority: CA)**にも義務があります。具体的には、署名検証者は、発行したCertificateが信頼できるものであることを確認し、その信頼性を検証するために合理的な手段を取る必要があります。これにより、電子署名が適切に機能し、信頼される取引の基盤が保証されます。
署名者および署名検証者がこれらの義務を果たすことで、タイにおける電子取引や電子署名の信頼性が確保され、安全な電子取引環境が提供されることが期待されています。
電子署名に社印は必要?
タイの会社では、法的に有効な正式な署名には、代表権を持つ署名権限取締役(Authorized Director)の署名に加えて、社印(Company Seal)の押印が必要とされる場合が多いです。この社印の必要性は、会社の登録情報に基づいて商務省に登録されているため、会社ごとに異なる場合があります。
タイの電子取引法は、電子社印の有効性を認めており、物理的な社印の代わりに電子的な社印の使用も可能です。つまり、従来の紙の書類に押印する社印と同様に、デジタル書類にも電子社印を押印することで、法的に有効な書類とすることができます。
ただし、一般的に使用されている電子署名ソフトウェアでは、電子社印の対応がされていない場合もあります。そのため、もし会社が署名に加えて社印の押印が必要な場合は、電子署名と別に電子社印の押印も行う必要があります。こうした場合には、使用するソフトウェアやプラットフォームの対応状況を事前に確認し、必要な手続きに対応できるよう準備することが重要です。
また、取引先が電子署名を使用する場合も、手書き署名の場合と同様に、まず取引先の署名権限を確認することが重要です。加えて、もし社印の押印が必要な場合は、取引先の書類に社印の押印が適切に行われているかどうかを確認する必要があります。これにより、法的な効力を確保し、契約や取引が適切に進められるようになります。
さいごに
タイ電子取引法は、約25年前に施行され、電子署名の利用を幅広く認める法的枠組みを提供しています。しかし、実際に電子署名が注目を集め、活用が進んだのは、近年のコロナ禍における移動制限やリモートワークの普及が一因です。パンデミックによって、物理的な署名が難しくなり、デジタル手段による契約や取引のニーズが急増したため、電子署名の有用性が改めて認識されました。この背景により、タイ国内において電子署名の導入とその重要性が一気に高まりました。
使える物と使えない物をしっかり理解しよう
ただし、電子署名の法的認知が進んでいる一方で、これまでの間、タイにおける電子署名の利用は比較的限定的であったため、この分野に関する判例や実務の蓄積はまだ十分とは言えません。特に裁判所での電子署名の有効性を巡る判決や、具体的なビジネス実務での使用事例は少なく、この技術が法的にどのように解釈されるかは依然として発展途上です。このため、電子署名に依拠して取引を行う場合には、十分な注意と準備が必要です。
特に重要な契約や取引を電子署名で進める場合、リスクを最小限に抑えるためには慎重なアプローチが求められます。まず、信頼性が高く、普及している電子署名アプリケーションやサービスを利用することが重要です。信頼性の高いシステムは、署名の真正性を確保し、取引相手との信頼を築くための大きな助けとなります。次に、電子署名を使用した契約や取引に関しては、証拠をしっかりと残すことが推奨されます。
取引のバックアップとして、署名に関する記録や関連する通信や交渉の履歴を保存しておくことで、万が一、取引の有効性や署名の適法性が問題となった場合にも、証拠として提示できる可能性が高くなります。これにより、トラブルの際に法的に有利な立場を取ることができるでしょう。
タイの電子サイン普及は今後に期待!
さらに、電子署名が法律上認められているとはいえ、タイにおいては電子署名をめぐる実務慣行がまだ確立されていない現状を踏まえ、より慎重な運用が求められます。例えば、タイでは一部の政府機関や取引において、従来の紙媒体の署名や印鑑が依然として一般的です。
そのため、取引の相手方や政府機関の対応を確認し、電子署名が受け入れられるかどうかを事前に確認することが重要です。重要な取引においては、紙の署名や押印と併用することで、さらなる安心感を得ることができます。
こうした背景を考慮すると、電子署名を利用する際には、従来の署名と同様に慎重な対応を心がけることが、取引の成功と安全性を高める鍵となります。タイにおける電子取引の普及が進むにつれて、この分野における判例や実務も増えていくことが予想されますが、現時点ではまだ不確定な要素が多いため、慎重な対応が重要です。