海外旅行では公共Wi-Fiのセキュリティリスクや、日本のコンテンツへのアクセス制限といった問題がつきまといます。しかし、VPNを利用すれば、通信の暗号化によるセキュリティ向上と地域制限コンテンツの視聴が可能です。
今回の記事では、VPNの仕組み・具体的な活用方法・おすすめのVPNサービスまでを詳しくまとめました。さらに、メリット・デメリット・世界各国のVPN規制状況・申し込みから利用までの流れについても紹介します。
海外旅行やワーケーションを予定している人は、出発前に安全なインターネット環境を実現できるVPNの導入を検討しましょう。
VPNとは?海外旅行ではなぜ必要?
NordVPNによると、VPNは「Virtual Private Network」の略称で、インターネット上に仮想的な専用回線を構築する技術です。
海外旅行では、主にセキュリティの確保と日本のコンテンツへのアクセスという2点でVPNが必要とされます。たとえば、空港・ホテル・カフェなどで利用する一部の公共Wi-Fiは、セキュリティが甘く盗聴の危険性があります。しかし、VPNを活用すれば通信セキュリティを高めて情報漏えいリスクの最小化が可能です。
また、多くの動画配信サービスでは地域制限によって海外からはアクセスできないように規制されています。ところが、VPNを活用すれば日本のサーバーを経由し、海外から国内の動画などのコンテンツを楽しめます。
参考:NordVPN「VPNとは?仕組みとメリット、必要性を解説」
どんなときに使う?海外でVPNを利用するメリット
海外でVPNを利用するメリットは、以下のとおりです。
- 通信セキュリティの向上
- 海外から日本のアプリ・コンテンツにアクセス
- 航空券・ホテル・サブスクリプションを安く購入
- インターネット検閲を回避
- パソコン・タブレット・スマホなど多様なデバイスに対応
どのような活用シーンがあるのかを理解し、渡航する前にVPNの導入について検討しましょう。
通信セキュリティの向上
海外で公共Wi-Fiを利用する場合、VPNによる通信セキュリティの向上はもっとも重要なメリットのひとつです。
一部の公共Wi-Fiはセキュリティが甘く、第三者に情報を盗み見られたり漏えいしたりするリスクは無視できません。しかし、VPNを利用すれば通信が暗号化されるため、個人情報や重要なデータが漏えいするリスクを最小限に抑えられます。
とくに、海外に仕事やワーケーションで渡航する場合、重要データの漏えい予防にVPNの利用がおすすめです。
海外から日本のアプリ・コンテンツにアクセス
海外でVPNを利用すれば、動画を主とした日本のコンテンツに自由にアクセスできるようになります。多くの動画配信サービスは、著作権などの関連で海外からのアクセスを規制しています。そのため、一般的な方法では、海外から日本の動画配信サービスにアクセスしても動画を視聴できません。
しかし、VPNを利用すれば、TVer・U-NEXT・Huluなどの動画配信サービスを海外から視聴できるようになります。VPNで日本のサーバーを経由するため、あたかも国内からアクセスしているかのように見せかけられるからです。
航空券・ホテル・サブスクリプションを安く購入
VPNを利用すれば、航空券・ホテル・サブスクリプションを大幅な割引価格で購入できます。
航空会社や旅行サイトは接続する地域によって価格設定が変わるため、物価の安い国のサーバーを経由すればお得に購入できます。また、サブスクリプションも同様に国によって料金が大きく異なるため、物価の安い国からの契約がおすすめです。
日本と物価が安い国でのサブスクリプションの価格の違いを、以下の表にまとめました。
サービス名 | 日本の料金 | 最安値の国・料金 | 価格差 |
Amazon Prime | 480円 | トルコ:35円 | 445円 |
Spotify | 980円 | インド:211円 | 769円 |
Apple Music | 1,080円 | トルコ:88円 | 992円 |
YouTube Premium | 1,280円 | アルゼンチン:153円 | 1,127円 |
Netflix(スタンダード) | 1,590円 | インド:299円 | 1,291円 |
インターネット検閲を回避
インターネット検閲の厳しい国でも、VPNを利用すれば自由なインターネットアクセスが可能になります。
中国・ロシア・イランなどではインターネット接続が制限されており、多くのWebサイトやサービスが利用できません。たとえば、中国ではGoogle・Facebook・LINEなどの主要なサービスへのアクセスが制限されています。
しかし、VPNなら通信を暗号化し、海外のサーバーを経由すれば政府による検閲を回避できます。ただし、中国・北朝鮮・ロシア・ベラルーシなどの国々ではVPN自体が違法とされているため、利用には十分な注意が必要です。
パソコン・タブレット・スマホなど多様なデバイスに対応
VPNはパソコン・スマホ・タブレットなど、さまざまな機器で安全なインターネット接続を実現できます。また、主要なVPNではWindows・macOS・Android・iOS・Linuxなど、幅広いOSに対応しています。
多くのVPNではひとつのアカウントで10台以上を同時接続できるため、契約を家族や知人とシェアするのも可能です。さらに、ルーターにVPNを設置すれば、ネットワーク内のすべてのデバイスを一括で保護できます。
VPNを利用するときのデメリット
VPNを利用するときのデメリットは、以下のとおりです。
- 通信速度の低下
- 無料VPNは危険
- 有料VPNは費用が発生
VPNを利用するデメリットについてあらかじめ理解しておき、活用方法について考慮しましょう。
通信速度の低下
VPNを利用すると、通信を暗号化し遠隔のサーバーを経由する仕組みのため、多くの場合は通信速度が低下します。また、利用しているサーバーにアクセスが集中し、通信速度が低下するケースも無視できません。
ただし、高品質のサーバーを設置しているVPNなら、通信速度の低下は最小限に抑えられます。通信速度の速いVPNを選ぶなら、事前に口コミ・評判を確認しておくのがおすすめです。また、30日間返金保証などを利用し、使い勝手と通信速度についてノーリスクで確かめておきましょう。
無料VPNは危険
無料VPNは深刻なセキュリティリスクを抱えており、個人情報の漏えいやマルウェア感染の危険性をはらんでいます。たとえば、無料VPNの84%でデータの漏えいが確認されており、個人情報が第三者に売買される事例が報告されています。
また、2020年には7つの無料VPNサービスから2,000万人以上の個人情報が流出する事故が発生しました。無料VPNの運営者は、ユーザーの個人情報や閲覧情報を収集・販売して収益を得ているケースが多いため注意が必要です。
なお、無料VPNは通信速度が遅くデータ容量に制限があるため、動画視聴やオンラインゲームには適していません。
参考:INTERNET Watch「Android用“VPNアプリ”の18%で暗号化が行われず、16%は家庭向け回線でホスト」,Award-winning news「Seven VPN services leaked data of over 20 million users, says report」
有料VPNは費用が発生
有料VPNサービスは、契約期間や選択するプランによって月額数百円から2,000円程度の費用が必要になります。一般的な有料VPNの料金相場を、以下の表にまとめました。
契約期間 | 料金相場(月額) |
1か月 | 1,500円~2,000円 |
2年 | 500円~800円 |
なお、長期プランは初回に一括払いが必要となり、途中で解約しても返金されないケースがほとんどです。短期的な渡航なら1か月プラン、長期的に利用するなら1年~2年など自分に適した契約期間を検討しましょう。
海外で利用するVPNサービスを選ぶポイント
海外で利用するVPNサービスを選ぶポイントは、以下のとおりです。
- サーバー数・設置国の確認
- 通信速度
- セキュリティと信頼性
- 価格・契約期間
- サポート体制
- アプリの利用しやすさ
自分の活用方法にあったVPNを選ぶために、どのポイントが重要なのかを十分に検討しましょう。
サーバー数・設置国の確認
海外で利用するためのVPNを選ぶときは、サーバー数・設置国の確認がたいへん重要なポイントです。
多くのユーザーが同時にアクセスしても通信速度が低下しにくく、安定した通信をできるのがサーバー数が多いメリットです。また、日本の動画配信サービスを海外から利用するなら、国内サーバーの数も同時に確認しておきましょう。
日本のVPNと比較すると、海外VPNはサーバー設置国数やサーバー数が圧倒的に多く、より柔軟に利用できます。
通信速度
動画視聴やオンラインゲームを楽しみたいなら、VPNの通信速度は快適なインターネット利用を左右する重要なポイントです。VPNを契約する前に必ず、口コミ・評判で通信速度に関する評価を確認しておきましょう。
利用目的別に必要な通信速度を、以下の表にまとめました。
利用目的 | 必要な通信速度 |
メール・チャット | 1Mbps |
写真投稿 | 3Mbps |
動画投稿 | 10Mbps |
動画視聴・Web会議 | 25Mbps~50Mbps |
オンラインゲーム | 100Mbps |
なお、海外で利用する場合は渡航する国のインターネット事情や回線速度も、あらかじめ確認しておくのがおすすめです。
セキュリティと信頼性
VPNサービスを選ぶときは、暗号化技術と認証システムが強固で信頼性の高いサービスを選択するのが重要です。「第三者機関からの検証を受けている」「定期的にアップデートが行われている」といった点に着目し、信頼性を確認しましょう。
くわえて、二要素認証などの高度な認証システムを提供しているVPNなら、不正アクセスのリスクを軽減できます。
価格・契約期間
VPNの価格は契約期間によって大きく変動し、1年や2年といった長期契約ほど月額料金を抑えられます。契約期間による料金相場の違いを、以下の表にまとめました。
契約期間 | 料金相場(月額) |
1か月 | 1,500円~2,000円 |
2年 | 500円~800円 |
多くのVPNサービスが30日間の返金保証を提供しているため、長期プランでも1か月以内ならノーリスクで試せます。なお、VPNを比較するなら価格だけではなく、ほかのサービス内容も考慮して総合的な費用対効果を検討しましょう。
サポート体制
24時間365日の充実したサポート体制を提供しており、万が一のトラブルのときでも迅速に解決できるVPNを選びましょう。とくに、海外のVPNサービスを選ぶ場合は、日本語でのサポートが受けられるかどうかを確認する必要があります。
また、サポート体制のクオリティについては、口コミ・評判であらかじめ確認しておくのがおすすめです。ライブチャット・問い合わせフォーム・電話など、自分に適したサポート方法が提供されているかどうかも重要です。
アプリの利用しやすさ
スマホでも通信セキュリティを確保したい人にとって、VPNアプリの使いやすさは快適な利用を左右する重要な要素です。
起動速度・サーバーへの接続時間・ブラウザ拡張機能の有無・設定のしやすさなどが、使い勝手を大きく左右します。アプリの使いやすさについては、30日間返金保証の期間内で実際に利用して試すのがもっともおすすめです。
また、以下のような代表的な機能が搭載されているかどうかも確認しましょう。
機能 | 概要 |
キルスイッチ | VPN切断時に通信を遮断しIPアドレスの漏えいを防止 |
スプリットトンネリング | 指定したアプリ・サイトのみVPNを経由する設定が可能 |
マルチホップ接続 | 複数サーバーを経由してセキュリティを強化 |
DNS漏えい防止 | DNS要求をVPN経由で処理し接続先を保護 |
自動接続 | 起動時やWi-Fi接続時に自動でVPNを有効化 |
どれがいい?海外で利用するならNordVPNがおすすめ!
料金(税込み) | 2年プラン:570円/月 1年プラン:730円/月 1か月プラン:2,070円/月 |
サーバー数/国数 | 7,100台以上/118か国 |
ノーログポリシー | ◯ |
通信速度 | ◯ |
同時接続台数 | 10台 |
カスタマーサポート | 365日24時間対応 公式サイト・アプリが日本語対応 メール・ライブチャット |
公式サイト | https://nordvpn.com/ja/ |
海外でVPNを利用するなら、セキュリティと通信速度の優れたNordVPNがおすすめです。NordVPNは世界118か国に7,100台以上のサーバーを設置しており、安定した通信環境を提供しています。
独立ITセキュリティ機関「AV-TEST」の調査で通信速度は業界最速を記録しており、動画視聴もストレスなく行えます。脅威対策機能で広告やマルウェアをブロックし、デバイスのセキュリティが強化されるのも特徴です。
サポートは24時間365日対応しており、日本語での問い合わせにも翻訳アプリを使用して回答してくれます。
参考:TechNadu「AV-Test Crowns NordVPN the King of VPNs in Terms of Performance and Speed」
VPNの利用が違法になる国や規制の状況
海外でVPNを利用するなら、必ず渡航前に規制があるかどうかを確認しましょう。VPNの規制がある国々について、以下の表にまとめました。
国 | 規制タイプ | 概要 |
中国 | 認可VPNのみ合法 | 政府認可VPNのみ使用可能。違反時は1万5,000元以下の罰金 |
ロシア | 違法 | 政府指定の違法サイトへのアクセスに使用するのは違法 |
北朝鮮 | 違法 | 一般市民のVPN使用は厳禁。違反時は懲役刑の可能性 |
ベラルーシ | 違法 | 2015年から違法化。重い罰金あり。政府によるトラフィック監視実施 |
トルクメニスタン | 違法 | 未認可の暗号化プログラム禁止。違反時は罰金、または最大7年の懲役 |
イラク | 違法 | 違反時は最大8,000ドルの罰金または投獄の可能性 |
イラン | 違法 | 当局の明示的許可がない限り違法。サイバー空間最高評議会の指令に基づく |
オマーン | 認可VPNのみ合法 | 個人利用は禁止。違反時は最大2,600ドルの罰金。機関が利用する場合は許可申請が必要 |
アラブ首長国連邦 | 制限付き合法 | 違法行為への使用で禁錮刑か最大200万ディルハムの罰金 |
エジプト | 制限付き合法 | 禁止サイトへのアクセスに使用すると投獄の可能性 |
トルコ | 制限付き合法 | 特定VPNプロバイダーへのアクセスを禁止。違法コンテンツアクセスは処罰 |
ウガンダ | 制限付き合法 | SNS税回避目的の使用を制限。政府によるVPNブロックとトラフィック監視実施 |
世界各国でVPNの規制状況は大きく異なり、完全違法から条件付き合法までさまざまな規制が存在します。情報統制・テロ対策・社会秩序の維持など理由はさまざまで、違反した場合は罰金や懲役などの厳しい罰則が設けられています。
有料VPNの申し込みから利用の流れ
有料VPNの申し込みから利用の流れは、以下のとおりです。
- アカウント登録
- 支払い方法を選択して契約
- アプリをインストールしてVPN接続
VPNの契約手続きは誰でも簡単に3分ほどで終わるため、初心者でも手軽に申し込めるのが大きな魅力です。
1.アカウント登録
有料VPNサービスの利用を開始するには、まずアカウント登録を最初に行いましょう。登録に必要な情報はメールアドレスのみとなりますので、難しい手続きは必要ありません。
2.支払い方法を選択して契約
アカウント登録が終わったら、支払い方法を選択して契約を行いましょう。有料VPNでは、主に以下のような支払い方法が提供されています。
支払い方法 | 対応決済手段 |
クレジットカード | VISA・MasterCard・JCB・AMEX・DISCOVER |
電子決済 | PayPal・Google Pay・Amazon Pay・UnionPay |
暗号資産 | ビットコインなど |
3.アプリをインストールしてVPN接続
契約が完了したら公式サイトからVPNアプリをインストールし、VPN経由でインターネットにアクセスしましょう。
アプリのインストールが完了したら、契約時に設定したメールアドレスとパスワードでログインを行います。ログイン後は、アプリのメイン画面に表示される「接続」ボタンをクリックするだけでVPN接続を開始できます。
海外でVPNを利用するときによくある質問
海外でVPNを利用するときによくある質問は、以下のとおりです。
- VPNの利用時におすすめの海外サーバーは?
- VPNで海外のNetflixを視聴する方法は?
あらかじめVPNに対する疑問や不安を解消しておき、海外で安全・快適なインターネット環境を構築しましょう。
VPNの利用時におすすめの海外サーバーは?
VPNの利用時に最適なサーバーを選択するには、利用目的と地理的な距離の2つの要素を考慮しましょう。
通信速度を重視する場合は、渡航している国や地域から近いサーバーを選択すれば安定した高速通信が可能です。一方、サブスクリプションなどを安価に利用したい場合は、トルコ・インドなど物価の安い国のサーバーを選択しましょう。
VPNで海外のNetflixを視聴する方法は?
海外のNetflixを視聴したいなら、VPNサービスに登録して専用アプリをインストールし、VPN接続を行いましょう。インストールしたアプリで視聴したい国のサーバーを選択すれば、海外版のNetflixに接続できます。
日本では配信されていないジブリ作品や、ハリー・ポッターシリーズなどを視聴できるのが海外版Netflixの魅力です。また、トルコなど物価の安い国のサーバーを経由すれば、月額料金が半額以下に抑えられるのも大きなメリットです。
海外旅行時はVPNを契約して安全にインターネット接続しよう!
海外旅行においてVPNは、通信セキュリティの確保と日本のコンテンツへのアクセスを実現する重要なツールです。空港やホテルなどの公共Wi-Fiには情報漏えいリスクがありますが、VPNを使用すれば暗号化によって安全性を高められます。
また、海外からでも日本の動画配信サービスを視聴でき、航空券・ホテル・サブスクリプションも安価に購入が可能です。ただし、VPNの利用には通信速度の低下や月額500円~2,000円程度の費用が発生するのがデメリットです。
渡航前にVPNを導入し、安全で快適なインターネット環境を手に入れて海外旅行を楽しみましょう。