日本とは違い、海外の多くの国にはチップ文化が根づいていますが、在住日本人数が多いカナダもチップ文化のある国の一つです。
チップ文化がある国を訪れる際に気になるのが、「どのくらい渡せばいいの?」「渡す場面や方法がわからない」だと思います。
国によって、チップの金額や渡し方に違いがあるので、旅行先が決まったらチップ事情をチェックするのも重要です。
今回は、カナダに住んでいる情報を基に、リアルなカナダのチップ事情をご紹介いたします。カナダ旅行や留学、駐在などで訪れる方はぜひ参考にしてください。
カナダのチップ制度
まずは、カナダのチップ制度に関してご紹介いたします。「Tip」とは、日本語でいうと「心づけ」。すなわち、サービスに対する感謝を表すお金ですので感謝した際に渡す物というイメージがあるかもしれませんが、感謝に関わらずチップを払うのが普通です。
一般的には「Gratuity (グラトゥイティ)」や「Service Charge (サービスチャージ)」と表現されることもあります。北米のアメリカとカナダに深く根づいた文化です。
一応チップの支払いに強制力はありませんが、マナーとみなされているため、レストランなどでサービスを受ける場面では「払うのが常識」と言ってもいいえしょう。
たとえば、カナダ滞在中に食料品店などでアルバイトをする場合、チップを想定した最低時給に設定されていることが多く、いかにチップが重要なインセンティブとなっているかを実感するでしょう。
日本の無償サービスに慣れたわたしたちには、ときにしぶってしまう気持ちや忘れそうになるのも理解できますが、「郷に入っては郷に従え」の思いを持ち、マナーを尽くしましょう。
払わなかった場合、理由を聞かれたり、時には追いかけられたりする体験談もあるほどです。「日本人はケチだ」などと思われることのないよう、適切なチップを渡すようにしてください。
カナダのチップ相場
次にカナダのチップ相場ですが、一般的には合計金額の15〜20%が相場となっています。
サービスの質や満足度によって、この割合を自分で決めることができます。ただ、不満があった場合でも全く払わないのではなく、額を下げて払うのがマナーとされているので注意しましょう。
下記はカジュアルなレストランでの相場の目安です。参考にしてみてください。
・10%: 良くなかった
・15%: 普通だった
・18%: 良かった
・20%: とても良かった
上記は一般的なレストランでの支払うチップの相場ですが、シチュエーションやお店のクラスによって相場感は変わってくるため、つぎに詳しく解説します。
場面で異なるカナダでチップ相場
先程ご紹介したとおり、カナダではさまざまなサービスでチップを渡す文化が根付いています。
状況によって金額や渡し方が異なるため、それぞれの場面での相場や注意点を理解しておくと安心です。以下に代表的なシチュエーションごとに詳しく解説します。
レストラン・バー・カフェ
飲食店でのチップは、最もよくある場面のひとつです。特にテーブルサービス(料理を運んでもらう形式)を提供するお店では、必ずチップを支払う習慣があります。
・カジュアルなレストラン
先程ご紹介した通り、チップの目安は合計金額の15〜20%です。ランチは15%、ディナーは18〜20%といったように、時間帯によって差をつけても問題ありません。
・高級レストラン
高級レストランなどの料理の質やサービスの質が高い場合は、最低で20%以上のチップを渡すことが一般的になるので注意しましょう。
・バーなどの飲み屋
バーでドリンクを作ってくれるバーテンダーへのチップはお酒1杯につき1〜2ドルが一般的です。たくさんのドリンクを一度に注文した場合は20%程度を目安に払うといいでしょう。
・スターバックスなどのカフェ
スターバックスなどのカウンター形式のカフェではチップを払わなくても問題ありませんが、テーブルサービスがある場合は15%程度のチップを渡すのが一般的です。
美容院・美容サロン
美容室やネイルサロン、マッサージ店などの美容サロンといったマンツーマンでの施術を受けるサービスを受けた際にもチップが必要です。
・チップの相場
こちらのチップ相場は合計金額の15〜20%が一般的です。施術の技術やサービスに満足した場合は多めに渡すと喜ばれます。
・ポイント
施術が特に気に入ったり、会話が楽しかった場合はチップで感謝を示すことで、次回以降のサービスにも良い影響を与えるでしょう。
タクシー・Uber
移動手段としてタクシーやUberやLyftを利用するのが一般的ですが、そういった交通手段を利用した場合もチップを渡すのが一般的です。
・タクシー
運賃の10〜20%をチップとして渡します。短距離(運賃が5ドル以下)の場合は1〜2ドル、長距離(運賃が10ドル以上)の場合は5ドル程度を基準にすると良いでしょう。
・Uber・Lyft等の配車アプリ
チップはアプリ内で支払うことができ、運賃の10〜20%が目安です。公式サイトによると、チップは100%ドライバーに渡る仕組みとなっています。
荷物の運搬は追加で
旅行でスーツケースなどの荷物をドライバーが運んでくれた場合は、チップを多めに渡して感謝するのが一般的です。
ホテル
カナダ旅行の際にはホテルを利用する事が多いと思いますが、ホテルでは多くのサービスが提供されるため、シーンに応じて適切なチップを渡すのがマナーです。
・ポーター
荷物を運んでくれた場合は、1つの荷物につき1〜2ドルを手渡します。
・ハウスキーパー(清掃スタッフ)
ベッドメイキングや清掃をしてくれた場合は、1日あたり2〜5ドルを枕元に置いておきます。連泊する場合も毎日渡すことをおすすめします。メモを添えるとさらに好印象です。
・ルームサービス
ルームサービスを利用した際には合計金額の15%がチップの相場です。ただし、サービス料が含まれている場合は追加で支払う必要はありません。
フロントデスクでの支払いは不要
色々な場面でチップを払うチップが必要なホテルですが、フロントスタッフへのチップは不要とされています。
フードデリバリー
カナダに留学や赴任などで中長期滞在するという場合には、UberEatsやDoorDashなどのフードデリバリーサービスを利用する機会も多いと思いますが、そういった際にもチップは必要です。
・チップの相場
注文金額の5〜20%をチップとして支払います。特に大雨や雪の日など、悪天候での配達には多めのチップを渡すのが礼儀です。
支払い方法
フードデリバリーアプリのチップの支払いはアプリ内で完結するため、配達員に直接現金を渡す必要はありません。
チップを渡す際の注意点
・現金の準備
特に小額紙幣やコイン(1ドル、2ドル)をあらかじめ用意しておくとスムーズに対応できますので、お釣りを適度に残しておくと良いでしょう。
・サービスの質に応じて調整
基本は15〜20%ですが、サービスに満足できなかった場合は額を下げることで不満を表現することができます。ただし、まったく払わないのはトラブルの元ですので避けましょう。
・感謝の言葉を添える
チップを渡す際に「Thank you!」と言葉を添えると、感謝の気持ちがより伝わるので癖付けするとスマートにカナダ生活を送ることが出来ます。
カナダではチップがサービスに対する評価や感謝の表現として広く受け入れられています。現地の文化を理解し、適切な場面でスマートにチップを渡せるよう心がけましょう!
チップの支払いの流れとポイント
チップを計算する際に、税前なのか税込なのか悩むという方も多いと思いますが、結論としては、どちらでも構いません。ただし、カナダでは実際に税抜き(Pre-tax)の金額で計算する人が多い傾向にあります。
税前で計算する人が多い理由としてはのような理由があります。
・税率の複雑さ
カナダの消費税は州ごとに異なり、商品やサービスのカテゴリごとに税率が変わる場合もあります。たとえば、アルコール飲料には通常より高い税率が適用される場合があるため、税込み金額で計算するとチップの額が予想以上に高くなることがあります。
現金払いの場合の計算方法
現金でチップを支払う場合は、税抜き金額をもとにざっくりと計算し、キリの良い額を渡すのが一般的です。たとえば:
例)税抜き50ドルの場合
- 税込み金額は55ドル
- チップを15%で計算すると税抜き金額の15%で7.5ドル
- キリの良い8ドルまたは10ドルを渡すとスマートです。
このように、細かい計算にこだわらず、大まかにチップを支払うのが現金の場合のポイントですので上記を参考に意識してみてください。。
カード払いの場合の計算方法
カードで支払う場合、チップの支払いはさらに簡単になります。
多くの飲食店やサービス施設では、カード決済端末にチップの計算機能が備わっています。支払い時には以下のような選択肢が提示されることが一般的です:
・15% / 18% / 20%などの固定率を選択
支払いの際に固定のチップ率を選択する機能が付いているケースも多いです。この場合、税込み(After-tax)金額に対して選んだ割合でチップが自動計算されます。
・金額を手入力
チップ額を自分で入力する方法も選べます。この際、税抜き・税込みのどちらを基準にするかは自由ですが、端末に表示されているのは税込み金額なのでその金額が基準となることが多いです。
「No Tip」の選択もあるが
特別な事情がある場合、チップを払わない選択肢もありますが、サービス提供者への配慮を忘れないようにしましょう。
状況に応じた柔軟な対応を
カナダではチップの計算方法に厳密なルールはありませんが、地元の慣習や状況に合わせることが大切です。
・現金払いでは税抜き金額を基準に大まかに計算し、キリの良い額を支払う。
・カード払いでは端末の提示に従い、税込み金額で計算することが一般的。
これらのポイントを押さえておけば、どの場面でもスムーズにチップを支払うことができます。次に、具体的な支払い方法やチップ文化の背景について詳しく解説します。
カナダでチップが不要なケース
チップは北米をはじめ多くの国で重要なマナーの一つですが、必ずしもすべての場面で支払う必要があるわけではありません。以下に、チップが不要なケースを詳しく解説します。支払う必要があるか迷ったときの参考にしてください。
テイクアウトの場合
通常、チップが必要とされるレストランでも、テイクアウト利用のみの場合はチップを支払う必要は原則ないとされています。これは、テイクアウトでは食事の提供やサービスがテーブルで行われないためです。
・ポイント
もしチップを支払いたいという場合でも、少額(例えば1〜2ドル)で十分とされています。
セルフサービスの場合
ファストフード店やフードコートなど、セルフサービス形式の店舗では、チップは原則不要です。これらの店舗では、お客様が自分で注文をし、料理を受け取る形式となっており、スタッフが直接的なサービスを提供しないためです。
・カフェの場合
カフェもセルフサービス形式が多く、チップは通常必要ありません。ただし、一部のカフェではチップジャーが置かれていることがあります。ここでは、お釣りの一部を入れる程度で十分です。
・注意点
フルサービスを提供する高級カフェやレストラン併設型のカフェでは、チップが必要になる場合があります。
すでにチップが含まれている場合
レストランやサービス施設で、「Gratuity Included」または「Service Charge」と明記されている場合、すでに請求書にチップが含まれています。この場合、追加でチップを支払う必要はありません。
・典型的なケース
大人数での食事
通常、8人以上のグループで食事をする場合、自動的に15〜20%のサービス料が加算されることが一般的です。
ビュッフェ形式のレストラン
ビュッフェでも同様に、サービス料が含まれる場合がありメニューに記載されている事多くあるので確認してみましょう。
不明な場合には確認しよう!
メニューや請求書にサービス料が含まれているかどうかを確認しましょう。
「Is the tip included?(チップは含まれていますか?)」とスタッフに尋ねても失礼にはなりません。
小売店の場合
スーパーやアパレルショップなど、物を購入する場面では、通常チップを支払う必要はありません。これらの業種では、チップを含む文化がありません。
・例外もあるので注意
配送やギフトラッピングなど、追加のサービスが提供された場合には、少額のチップを渡しても良いでしょう。ただし、これも必須ではありません。
チップが不要なケースのまとめ
チップ文化は状況によってルールが異なり、必ずしも全ての場面で必要ではありません。以下の基準を参考にしてください:
- テイクアウトやセルフサービスではチップ不要が基本。
- 請求書にサービス料が含まれている場合は追加チップは不要。
- 小売店や通常の商品購入ではチップ不要。
ただし、サービスに感謝の気持ちを示したい場合や、特別な対応を受けた場合には、少額でもチップを渡すと好印象を与えることができます。
カナダのチップ文化を理解しよう
カナダ旅行やカナダでの生活を楽しむ上で、チップ文化には注意が必要です。北米全般で一般的なこの習慣は、日本の文化とは異なるため、戸惑う場面も少なくありません。
しかし、適切に対応することでスマートに旅行や日常を過ごすことができます。まず、基本的にチップはサービスへの感謝を示すものであり、特にレストランやカフェ、タクシー、ホテルのポーターやハウスキーピングといった場面で求められます。レストランでのチップの目安は、合計金額の15〜20%です。
この際の「合計金額」とは、税抜きまたは税込みのどちらでも構いませんが、税抜き金額を基準にするのが一般的です。タクシーやハウスキーピングでは、距離やサービス内容に応じて数ドル程度を渡すと良いでしょう。
一方で、チップが不要なケースもあります。テイクアウトやファストフード、フードコートのようにセルフサービス形式の場合や、スーパーやアパレルショップでの物品購入時にはチップを支払う必要はありません。また、レストランの請求書に「Gratuity Included」や「Service Charge」と記載されている場合、すでにチップが含まれているため、追加で支払う必要はありません。不明点がある場合は、「Is the tip included?(チップは含まれていますか?)」と尋ねれば、失礼にあたることはありません。
旅行中や日常生活で、チップの習慣を正しく理解し、適切に対応することで、現地の文化を尊重しつつスマートな振る舞いができるはずです。カナダではサービス提供者への感謝の気持ちを示すことが大切ですので、チップを計算する手間も含めて、現地の生活や旅行を楽しむ一部として受け入れることをおすすめします。