タイでも進む業務のデジタル化
タイでは、2020年頃から、デジタル化やペーパーレス化の取り組みが急速に進んでいます。この流れは、政府や民間企業の業務効率向上のための施策として大きく加速しました。
日本でも2020年に河野太郎氏が「印鑑廃止」や「電子メールやオンラインの活用促進」を積極的に推進する意向を示したように、タイも同様に従来の紙ベースの手続きからデジタルへ移行する動きが見られます。特に、政府機関や大手企業を中心に、オンラインでの手続きが標準となりつつあります。
タイの企業でも業務改善が進む!
このデジタル化の流れはさらに加速しています。企業では、従業員の有給休暇申請や労務管理において、手書きの申請書やタイムカードの利用が減少し、電子化されたシステムによる処理が普及してきています。
特に、大手企業ではこれらのプロセスがほぼ完全にデジタル化され、申請から承認、給与計算に至るまでの手続きが一元管理できるようなシステムを導入する企業が増加しています。小規模な企業でも、コスト削減や業務の効率化を目指して、同様のデジタル化を検討する動きが広がっていると言えるでしょう。
さらに、タイ国内の銀行や行政サービスでもデジタル化が進んでおり、書類のオンライン提出や電子署名の利用が推奨されています。これにより、業務プロセスが迅速化し、業務効率が大幅に向上しています。例えば、以前は窓口での書類提出や物理的な署名が必要だった手続きが、現在ではオンラインで簡単に行えるようになり、申請から承認までの時間が大幅に短縮されています。
このようなデジタル化の進展は、今後も続くと予測され、紙ベースの手続きや書類管理はますます少なくなっていくでしょう。コロナウイルスの影響でリモートワークが普及したことも、デジタル化を後押しする大きな要因となっています。企業はこの機会を捉えて、業務プロセス全体の効率化を目指し、さらに多くの業務をデジタル化することで、競争力の向上を図っています。
業務のデジタル化のメリット
現代の生活では、常にインターネットに接続していることが当たり前となり、デジタル化の恩恵は書籍に限らず、あらゆる分野に広がっています。わざわざ決まった場所や手順でしかできない業務を重視する必要は、もはやほとんどないと言えるでしょう。
デジタル技術は、手書きなどのアナログな方法と比べて劣化せず、効率的に情報を処理できる点が大きな強みです。例えば、企業内で5年前のデータを探す必要がある場合、紙の書類を一つ一つ調べるのに比べて、デジタルデータであればキーワード検索を使って瞬時に見つけ出すことができます。こうした情報検索のスピードや正確さは、デジタルデータの大きな利点であり、企業の業務効率を大幅に向上させる要因となっています。
さらに、デジタルデータは複製や共有が容易で、バックアップを取ることもできるため、災害や盗難といったリスクからも守られやすいです。例えば、書類の束を一つ一つファイリングして管理する従来の方法と比べて、デジタル化されたデータは一元管理が可能であり、業務の透明性や効率性も向上します。
結論として、デジタルデータの利用は、私たちの生活や業務において今や欠かせないものとなっています。特にタイのようにインフラが整ってきた国では、その普及が加速しており、これからも紙からデジタルへの移行がますます進むことでしょう。
タイ政府も積極的に取り組むデジタル化
最近のタイ政府のデジタル化への取り組みは、さまざまな分野で急速に進展しており、特に2020年の新型コロナウイルスのパンデミックを契機に、デジタル技術の導入がさらに加速しました。以下は、タイ政府のデジタル化に関する主な取り組みです。
電子政府(e-Government)サービスの強化
タイ政府は、行政サービスのデジタル化を積極的に推進しています。これにより、国民が政府のサービスにアクセスしやすくなるだけでなく、手続きの迅速化と効率化が図られています。たとえば、以前は役所に足を運ぶ必要があった多くの手続きが、オンラインで行えるようになりました。具体的なサービスには、オンラインでの税金申告、企業の設立申請、ビザやパスポートの申請などがあります。
特に注目すべきは、「Digital Government Development Agency(DGA)」の設立です。
この機関は、政府部門のデジタル化を推進し、データの一元管理や電子化された行政手続きを進める役割を担っています。DGAは、電子署名や電子認証の普及に取り組み、政府機関間でのデータ共有も円滑に進むような環境を整備しています。
「Thailand 4.0」政策
「Thailand 4.0」は、タイ政府が掲げる国家戦略で、デジタル技術を活用して経済や社会の構造を革新することを目指しています。この政策は、農業、製造業、観光業などの従来産業のデジタル化を促進し、デジタル経済を中心とした成長を目指しています。特に、スマートシティの推進やフィンテック、AI(人工知能)、IoT(モノのインターネット)技術の導入が進んでおり、インフラの整備も進行中です。
「Thailand 4.0」では、中小企業(SMEs)のデジタル化支援も重要なテーマです。政府は、これらの企業がデジタルツールを活用して競争力を高めるための支援策や補助金を提供しています。また、オンラインビジネスを促進するために、デジタルマーケティングやeコマースのスキル向上にも力を入れています。
金融分野のデジタル化(フィンテック)
タイでは、金融業界のデジタル化も急速に進んでいます。タイ中央銀行は「PromptPay」というデジタル決済システムを導入し、国民間の送金や、企業と消費者間の取引が迅速かつ手軽に行えるようにしました。このシステムは、QRコードを使った支払いが可能であり、現金の使用を減らし、キャッシュレス社会への移行を推進しています。銀行や金融機関も、デジタルバンキングの導入を進め、モバイルアプリやオンラインサービスを充実させています。
さらに、デジタル通貨やブロックチェーン技術の実験も進めており、タイ中央銀行は「CBDC(中央銀行デジタル通貨)」の開発を行っています。これにより、より効率的な金融取引が可能となり、国際的なデジタル経済の一部としてタイの地位が高まることを期待しています。
デジタル化が進む中で、サイバーセキュリティの重要性も増しています。タイ政府は、2021年に「サイバーセキュリティ法」を施行し、サイバー攻撃から重要なインフラやデータを保護するための法的枠組みを整えました。また、国家サイバーセキュリティ委員会を設立し、国全体のサイバーセキュリティ対策を強化しています。
業務のデジタル化のデメリット
業務のデジタル化には多くのメリットがありますが、当然ながらデメリットやリスクも存在します。デジタルデータを業務で利用する場合、多くの企業は共有サーバやクラウドを活用してデータを保存し、それをネットワークを通じてアクセス・共有します。このプロセスは便利ですが、セキュリティ対策が不十分な場合、重大なインシデントを引き起こすリスクが高まります。データの紛失、改ざん、流出といった問題が発生すれば、企業の信頼や業務の継続に多大な影響を与えかねません。
特に、業務に関わる機密情報や個人情報を取り扱う企業では、サイバー攻撃やハッキングのリスクが現実の脅威となっています。例えば、ランサムウェア攻撃によってデータが暗号化され、アクセスできなくなったり、データが流出して企業の評判が損なわれたりするケースも増加しています。また、人的なミスによるデータの削除や誤った共有設定によって、意図しない情報漏えいが発生する可能性もあります。
社内のセキュリティー対策の徹底が必要
こうしたリスクに対処するためには、企業内でのセキュリティ対策を徹底することが求められます。まず、デジタルシステムの運用に関しては、専門知識を持つ担当者が必要となります。ネットワークの保護、ファイアウォールの設定、データのバックアップ、暗号化など、さまざまなセキュリティ対策を講じることが重要です。また、システムを適切に運用し、管理するためのスキルや知識を持った人材が不可欠です。さらに、社内全体にシステムの使い方やセキュリティ意識を浸透させるため、全従業員への教育やトレーニングも重要です。これにより、従業員一人ひとりがセキュリティリスクに対して高い意識を持ち、リスク回避の行動が取れるようになります。
しかしながら、こうしたシステム運用のための専門人材を採用し、内部での管理を徹底することは、特に中小企業にとってはコストがかかることでもあります。また、採用した人材が本当に十分な知識を持っているかを評価するのは容易ではありません。情報技術は日進月歩で進化しており、常に最新の技術や対策を理解し、実践できる人材を維持することは難しい課題です。
信頼性の高いシステムを導入する必要性
こうした背景を考慮すると、多くの企業にとっては、自社で全てを管理するよりも、有名なクラウドサービスや信頼性の高いサードパーティのシステムを利用する方が、現実的かつ安全な選択となることが多いです。たとえば、Amazon Web Services(AWS)、Microsoft Azure、Google Cloudなどの大手クラウドプロバイダーは、高度なセキュリティ機能を提供しており、定期的なセキュリティ更新や監視、バックアップの自動化が標準装備されています。これにより、企業はセキュリティリスクを大幅に軽減しつつ、安心して業務をデジタル化することができます。
さらに、クラウドサービスは拡張性が高く、企業の成長や業務量の増加に応じてシステムを柔軟に拡大できる点も大きな利点です。内部でシステムを構築・運用する場合、容量やリソースが限られているため、急なビジネスの拡大に対応することが難しい場合がありますが、クラウドサービスを利用すれば、必要に応じて簡単にリソースを追加することができます。
クラウドサービスを選択する際には、信頼性の高いプロバイダーを選び、データの保護やセキュリティポリシーをしっかりと確認することが重要です。安価なサービスを選んだ結果、セキュリティ面で不備があったり、サービスが停止してしまったりするリスクがあるため、導入前に十分なリサーチを行うことが大切です。
結論として、デジタル化の進展に伴い、データの保護とセキュリティ対策はますます重要な課題となっています。企業は、自社に最適なデジタル化の方法を選び、リスク管理を徹底することで、業務の効率化と安全性を両立させることが求められます。
タイでおススメの業務のデジタル化関連サービス
タイでも現地でサポートが受けられる業務管理サービスはいくつか提供されておりますのでご紹介します。選ぶとすれば以下の2択かなと個人的には思います。
JOBCAN/ジョブカン
日本では哀川翔さんと手越さんがCMをしているJOBCANですが、こちらをタイで提供している企業があります。それがDonuts社なのですが、そのJOBCANにa2network社がさらにサポートを手厚くしているサービスが提供されています。気になる方はチェックしてみてください。
■クラウド稟議…紙ベースの稟議・申請作業を全てシステム上で完結させられるサービス
■スマート勤怠…タイムカードやシフト管理を全てシステム上で完結させられるサービス
kintone/キントーン
タイでも複数の大手企業が使っている業務改善システムのキントーンですが、2024年3月にタイ法人「Kintone (Thailand) Co., Ltd.」をバンコクに設立し、サービスを提供しております。
こちらも日系企業なのでサポートが期待できそうです。
■キントーン…ファイル管理・共有、データに基づくコミュニケーション申請・承認作業などを包括。
a2sign/エーツーサイン
日本で有名な電子契約サービス「サインタイム」とタイのa2network(Thailand)がタイにおけるペーパーレス推進でパートナーシップを締結して開始したサービスがa2signです。
■a2sign…電子署名サービスを利用することによる業務改善とペーパーレスの促進
まとめ
タイでは、近年急速にデジタル化や業務改善(DX: デジタルトランスフォーメーション)が進展しています。特に、2020年以降のコロナ禍がその推進力となり、政府や民間企業のデジタル導入が加速しました。政府は「Thailand 4.0」政策を通じて、電子政府(e-Government)サービスの充実、金融分野のキャッシュレス化、教育やヘルスケアのデジタル化など、幅広い分野でのデジタル技術の導入を推進しています。これにより、国民が行政サービスにオンラインでアクセスできるようになり、スマートシティやAI、IoTといった先端技術の導入も進んでいます。
民間企業においても、業務の効率化を目指したデジタル化が急速に進んでいます。紙ベースの書類や手作業でのプロセスが減少し、クラウドシステムやデジタルツールを利用して、業務の管理やコミュニケーションが効率化されています。また、フィンテックの進展により、デジタル決済が普及し、ビジネス環境も急速に変化しています。
しかし、デジタル化にはセキュリティリスクや専門知識の必要性といった課題もあります。サイバーセキュリティ対策の強化や専門人材の育成が急務であり、特に中小企業にとっては、これらの課題に対応するためのリソースが不足していることが問題です。
総じて、タイはDXを通じて経済の競争力を高め、デジタル社会への移行を着実に進めています。タイ政府と企業が協力してデジタル技術の導入と安全な運用を推進し、今後さらにグローバルなデジタル経済における地位を強化していくことが期待されます。